営業嫌いの背後にあるもの
w'AND illustrationの佐藤祐輔です。
2月11日に“「良いものはかならず売れる」のウソ”という記事を書きました。
- どんなに良いものでも存在を知られなければ売れるはずがない
- 自分が思う“良いもの”と人が思う“良いもの”はかならずしも一致しない
という2点に触れ、「良いものがかならずしも売れるわけではない」ということを示しました。それでも「良いものを作っていればかならず売れる」と固く信じられているように感じられます。
その理由について考えてみたいと思います。
営業は嫌われる?
「良いものを作っていればかならず売れる」とは「良いものならば営業をしなくても勝手に売れていく(に違いない)」の言い換えともとれます。その背後には「営業したくない」という気持ちが透けて見えるように、私には感じられます。
では、「営業」にはどのようなイメージがもたれているのでしょうか。
Wikipediaの「営業職」の項目には次のような記述がありました。
新規客を開拓するセールスマンの多くは、事前のアポイントメント(面会の約束。"アポイント"は誤用。略称アポとも)なしで一方的に訪問する(俗に言う飛び込み)ことが多く、営業活動や取引契約に際して、しばしばトラブルの原因ともなる。また、アポに基づいて訪問するタイプの営業であっても、元のアポ自体はほとんどの場合強引な無差別電話勧誘(テレマーケティングの一部)によるものであり、こちらもトラブルの原因となっている。個人宅への営業活動は押し売りなど消費者とのトラブルも多く、訪問販売の一つの形態として特定商取引に関する法律が適用され、消費者保護が図られている。また、最判平成20年4月11日によれば、飛び込み営業が住居侵入罪に該当する可能性も出てきた。
(参考:Wikipedia「営業職」より)
「営業」というと、このWikipediaの記述のように、“押し売り”のイメージをもっている方が多いのではないでしょうか。
営業代行を主な業務とする僕俺株式会社が2012年に行ったアンケート調査によると、営業のイメージは次のようになりました。
- 企業の売上げを左右する必ず必要な職種なので、会社の顔だと思う 39%
- 売れなければ会社のお荷物になるので、過酷な職業だと思う 31%
- 口先だけで商売しているイメージで、信用ができない 13%
- その他 6%
- 営業のカリスマを実際に見てみたい 6%
- 的確な説明を丁寧にしてくれるので、ありがたい存在だと思う 5%
(参考:「営業のお仕事について」アンケート(2012年7月)より)
「ありがたい存在」というイメージが5%であるのに対し、「信用できない」というイメージが13%。この結果からも、「営業」には良いイメージが薄いことがわかります。
「営業しない営業」は本当か
「営業しない営業」「集客しない集客」といった言葉をよく耳にします。
「良いもの、良いサービスを提供していれば自然とお客さんは集まるのだから、営業なんてする必要はない」という理屈です。このテーマのブログ記事にはたくさんの賛同コメントがつきます。
本当に「営業しない営業」は成り立つのでしょうか?
前回の記事に書いた通り、どんなに良いものやサービスであっても、その存在が知られてなければ売れようがありません。営業しなくてもお客さんがくる、という場合、まずある程度のお客さんがついていることが前提になります。口コミで広がるにしても、口コミの源がなければ広がりようがないのです。
ここでいう「営業しない営業」の営業とは、悪いイメージがもたれている、押し売り的な営業のことを指しているように感じられます。もし「自分の存在を知ってもらうための行為全般」を営業・集客とした場合、「営業しない営業」「集客しない集客」は成立しません。多くの人が「営業しない営業」に賛同するのは、押し売り的な営業が嫌だからなのでしょう。
押し売りはするのもされるのも嫌なのです。
その背景には、自己主張をよしとしない日本人の気質も垣間見えます。自分が提供する「良いもの」を「良いもの」ということに抵抗があるのでしょう。お歳暮を「つまらないものですが」といって相手に渡す、その心理です。
※お歳暮の場合は本当に「つまらないもの」とは思っていないでしょうけれど。
良いものだからといって、なにもしなくても勝手に売れていく、ということはありません。
それが良いものであることを発信し続ける必要があるのです。