w'ANDのつれづれノート

w'AND illustration代表の佐藤祐輔が考える絵のこと、仕事のこと、社会のこと・・・そんなことを日々つづっていきます。

「成功法則」があなたの役には立たない本当の理由

w'AND illustration代表の佐藤祐輔です。

みなさんは巷にあふれる「成功法則」を試してみたことがあるかもしれません。
それは本当に効果があったでしょうか、思い出してみてください。

私はいわゆる「成功法則」に懐疑的な立場をとります。
今回はその理由についてお話しします。

そこで本を一冊、ご紹介したいと思います。
w'AND illustrationの事業構想を練るにあたって参考にした本です。

3年前の2010年に出版された、まだ新しい本です。経営についての本としては異例の、12万部をこえるベストセラーだったそうな。話題になったのでご存知の方も多いでしょう。

本書にいう「文脈依存性」の考え方が今回の主題です。

 

重要なのは「因果関係」

Apoptosis NetworkApoptosis Network / sjcockell

この本では経営戦略をストーリーとして考えます。
ストーリーといってもいわゆる「おはなし」ではありません。利益をあげるための様々な打ち手(=個別要素)が明確な因果関係でつながっていることを指します。たとえば、手段Aが手段Bを可能にし、手段Bが手段Cを促進、その結果、手段Dが利益につながる、というように。

少し長いですが、引用します。

ストーリーとしての競争戦略は、「違い」と「つながり」という二つの戦略の本質のうち、後者に軸足を置いています。競争戦略は、「誰に」「何を」「どうやって」提供するのかについての企業のさまざまな「打ち手」で構成されています。戦略は競合他社との違いを作ることです。様々な打ち手は他社との違いをつくるものでなくてはなりません。
しかし、個別の違いをバラバラに打ち出すだけでは戦略にはなりません。それらがつながり、組み合わさり、相互作用する中で、初めて長期利益が実現されます。ストーリーとしての競争戦略は、さまざまな打ち手を互いに結びつけ、顧客へのユニークな価値提供とその結果として生まれる利益に向かって駆動していく論理に注目します。つまり、個別の要素について意思決定しアクションをとるだけでなく、そうした要素の間にどのような因果関係や相互作用があるのかを重視する視点です。
(p20)

個別要素が因果関係で結ばれているために、特定の要素だけを取り出してもそれだけでは機能しません。あるストーリーの中でだけ特定の要素が機能することを重視しています。
それを「文脈依存性」と呼びます。

戦略は因果論理のシンセシスであり、それは「特定の文脈に埋め込まれた特殊解」という本質をもっています。優れた戦略立案の「普遍の法則」がありえないのは、戦略が特定の文脈に依存したシンセシスだからです。
(p14)

 

通販会社がAmazon.comになれない理由

Datacenter WorkDatacenter Work / Leonardo Rizzi

Amazon.comの例を挙げましょう。

Amazon.comはインターネット通販の最大手です。
私もAmazon.comにはとてもお世話になっています。びっくりするくらいにすぐ商品が届くのが魅力のひとつ。家電量販店にいって良さそうな商品があったら、その場でスマートフォンで同じ商品がAmazonにないかチェック、Amazonの方が安ければそちらで買う、というようなこともします。Amazonの躍進は小売店にとって脅威にまでなっている、というような話も耳にします。

Amazonの本業はインターネット通販。
インターネット通販というと、店舗や在庫を持たず、身軽な経営ができることがメリットです。

Amazonは他の小売り大手以上に巨大な物流センターをもっています。
身軽であることがメリットのはずのネット通販企業が物流センターをもつのは非合理的です。センターへの投資は株主から批判を浴びました。しかし、現実にはAmazonは強力な物流センターを武器にネット通販最大手にまで成長しています。

アマゾンの典型的な物流センターには三〇〇万点の本やCD、DVD、玩具、家庭用品、家電製品が整然と棚に並んでいます。物流センターはきわめて高い水準の情報技術で武装されており、アマゾンのウェブサイトをつくるのと同じ量のコードを費やした専用のソフトウェアで、オペレーションは完全にコンピュータ化されていました。ピッキングとパッキングの効率を向上させるために、作業者はワイヤレスのレシーバーを身につけ、そこにコンピュータから自動的に情報が送られ、それに従って作業者が最も効率良い方法で商品をピッキングします。梱包された後の商品は、自動化されたラインを通じて発送されます。
(p341-p342)

この物流センターが実現できたのはAmazonの技術力の賜物です。
創始者のジェフ・ベゾス氏はプリンストン大学でコンピュータ工学を専攻したエンジニアでした。ベゾス氏はネット通販を事業化するにあたり、コンピュータ技術を重要視しています。Amazonには現在も多数の優秀なエンジニアが働いており、事業を支えています。

では、他のネット通販会社がAmazonと同じように物流センターをもったとしたらどうでしょうか。
物流センターを作れば、在庫切れが減り、迅速な対応ができて顧客満足度が上がるかもしれません。けれど、センターのオペレーションは高い技術力に裏打ちされています。技術がなければセンターはネット通販の「身軽さ」というメリットを損なう要素になってしまいます。

つまり、物流センターを武器にできたのは、Amazonがその背景に高い技術力をもっていたからなのです。

 

財布の値段であなたの年収は決まらない

Money WalletMoney Wallet / 401(K) 2013

昨今、「お金持ちは財布にお金をかける」という話はあちこちから聞こえてきます。
先日もこんな記事がありました。

つまりお財布とは、自分の「稼ぐ力」に対するセルフイメージを反映しているものなのだ。たとえ現在の年収が300万円しかないにもかかわらず10万円のお財布を使っている人は、間違いなく年収2000万円の方向に進んでいく。なぜなら、「このお財布にふさわしい金額が入ってくるはずだ」と彼ははっきり予感しているのであり、お金はそうした確信を持った人のことが大好きなのだ。
(参考:「年収は、なぜ「使う財布の値段」の200倍になるか?」2013年2月4日)

「年収が財布の200倍になる」法則があるそうです。
「じゃあ奮発して10万円の財布でも買ってみようか」と思ってしまいそうです。
たしかにこの方のおっしゃる通り、良いものをもつことは自分のイメージを高めます。良いスーツを着ればどんな人でもそれなりに見え、それなりの人たちとつきあうことができるようになるでしょう。

ただ、この財布の話に関しては、因果関係が逆のように思うのです。
「10万円の財布を使っているから年収が2000万円になった」のではなく、「一般的に財布には年収の200分の1のお金をかける傾向がある」のではないでしょうか。しかもこれは一般的な傾向であり、すべての人に当てはまるわけではありません。

2月17日に“ビジネスで成功する「ネガティブ思考」が流行!? でもその前に・・・”という記事を書きました。
そのなかで「成功している人にはネガティブに考える人が多い。だから自分もネガティブに考えれば成功できるに違いない!」と考えるのは短絡にすぎることに言及しています。

ネガティブに考えることは確かに成功の要因になるでしょう。

ここで忘れていけないのは「ポジティブに考える人にも成功者がいるということです。ネガティブだから、ポジティブだから成功できた、というわけではありません。
その人の「文脈」にネガティブさ、ポジティブさが埋め込まれたからこそ、成功の要因になったのです。Amazonをまねて物流センターだけをつくっても意味がないのと同じ道理です。

 

「成功法則」に飛びつく前に、もう一度じっくり考えてみましょう。

  • その法則はあなたの人生にフィットしそうですか?
  • あなたはそれで成功できると確信していますか?
  • そこでいわれていることを最後まで実行しきる覚悟はありますか?

そうでないなら、成功法則はそっとしまって、目の前の仕事に全力を尽くすべきです。

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