与沢翼氏と絵描きとしての矜持
w'AND illustration代表の佐藤祐輔です。
与沢翼氏という方が話題になっているようです。
1月13日から2週間、関東のJR前線に黄色の広告を出していたのを目にされた方も多いことでしょう。
(“与沢翼氏の総額3800万円かけた『JR広告ジャック』が話題に”)
ご自身の会社が資金ショートで倒産した後、元手10万円から2ヶ月で2000万円の利益をあげたそうです。
私はこの与沢さんという方に大変な嫌悪感を抱いています。
その理由について、私なりに考えてみました。
与沢氏の評価すべき点
「嫌悪感を抱いている」と書きましたが、与沢氏のすべてを否定しているわけではありません。
評価している点ももちろんあります。
従来のアフィリエイトでは、ブログやメルマガなどで読者にアフィリエイト商材を紹介して報酬を獲得します。
従来の方法で大きな利益をあげるためには、ブログやメルマガの読者数を増やす作業が必要となり膨大な時間がかかります。
一方、彼の方法では、まず広告主となって短期間のうちに顧客リスト(メールアドレス)を大量に入手し、それと同時に今度はアフィリエイターとして顧客リストに対して商材を紹介して報酬を獲得しています。
つまり、従来の方法と比較して圧倒的に「速い」のが特徴です。
しかし、広告主となって顧客リストを取得する段階では、500円/件のマイナスとなるため大きなリスクを伴います。
(ACラボ“与沢翼が10万円の元手から2ヶ月間で2千万円の利益を上げた方法”より)
この記述によれば、通常のアフィリエイトとは異なり、まず自分が広告主として出稿することでメールアドレス10万件を取得するところから始めています。10万件のメールアドレスを取得するには5000万円のコストがかかるそうです。その10万件のメールアドレスをつかって7000万円の利益をあげたため、差し引き2000万円の利益、というわけです。
アフィリエイトや情報商材に関する是非はともかく、与沢氏が2000万円の利益をあげたことは事実です。
その際、「最悪の場合5000万円の負債が発生する」というリスクを負っています。
ノーリスクハイリターンを求めがちな多くの人にとって、このリスクは背負いきれないものでしょう。
それでもこのリスクを負ってリターンを得た、という点は、多いに評価すべきだろうと考えています。
※日本人には「可能な限りリスクはとりたくない」という心理が強く働いているように思います。けれど、リスクをとらなければリターンは得られません。リスクを最小化する努力は必須ですが、「そもそもリスクをとらない」というところに問題があるようにも感じますが、これは別の話。
嫌悪感の源
与沢氏は短期間で2000万の利益を出すため、情報商材を扱いました。
ここでひとつ疑問が。
もし同じ方法で利益をあげられるのなら、扱う商品は情報商材でなくても良かったのではないか?
たとえば壷だったり絵だったり石油だったりしても、仮にまったく同じ手法がとれるのなら、与沢氏はどんな商品でも扱ったのではないか。
こんな疑問です。
私は自分の絵とともに、その絵に込めた思いもお客様に届けたいと思っています。
その思いとは「絵を飾ると、その空間に訪れた人がほっと安心できること」です。
ですから、カフェやレストラン、クリニックなどにおすすめしているのです。
この思いを抜きに「この商品は儲かるから」という思いで扱ってほしくない、と感じるのです。
お金に変えることにこだわるあまり、私の思いとは違うところに売られてしまったり、極端な安売りをされてしまったりするのではないか、という危惧があるのです。
これはなにも与沢氏に限ったことではありません。
おそらく「中間業者」と呼ばれる人たち全般に私が感じていることでしょう。
それがたまたま、与沢氏に関する記事などを読んで噴き出してきたものだと思います。
私は絵描きです。自分の描いた絵に愛着をもっています。
「愛着のあるものを大切にしてほしい」というのが私の正直な思いであり、矜持です。
日本はものづくりで世界をリードしてきました。
ところが昨今、日本製品はなかなか売れずに苦しんでいます。
「良いものさえ作っていればいい」という時代ではなくなってきているのです。
(“「良いものはかならず売れる」のウソ”)
その影響か、「100円のコーラを1000円で売る方法 」といった販売やマーケティングに関する本がたくさん出版されるようになってきました。
これは良いことだと思います。
従来弱かった部分を補完しよう、という動きですから。
ただ、「売る」ことにばかりフォーカスがあたってしまうことにも危惧をもっています。
「売る」ためには前提となる商品が必要です。「売る」ことを気にかけるあまり、商品を作るひとをないがしろにしてしまうのではないか、という不安があるのです。
私は絵描きであることに誇りをもっています。
価値を創造する仕事ですから。