w'ANDのつれづれノート

w'AND illustration代表の佐藤祐輔が考える絵のこと、仕事のこと、社会のこと・・・そんなことを日々つづっていきます。

スヌーズレンとアートが拓く可能性

w'AND illustration代表の佐藤祐輔です。

 

“日常におけるアートの役割と効果”の中で、建築医療という学問分野をご紹介しました。クリニックの建築物、その外装や内装そのものが治療効果に影響を及ぼす、という考え方です。
これと似た考え方に“スヌーズレン”というものがあります。

 

playroomplayroom / surlygirl

 

スヌーズレン (Snoezelen) とは、重度知的障害者を魅了する感覚刺激空間を用いて彼らにとって最適な余暇やリラクゼーション活動を提供する実践であり、またそのプロセスを通して構築されてきた理念でもある。
スヌーズレンという用語は、オランダ語で「クンクン匂いを嗅ぐ」、「うとうとする」という用語を組み合わせた造語で、外界を探索することや心地よくまどろむ状態を示すものである。
スヌーズレンの実践とは、障害を持つ人々(スヌーズレン利用者)にとって受け取りやすい感覚刺激に満たされた物理的環境、そして利用者と支援者が楽しみや安らぎを共有できる雰囲気のなかで、利用者が自分にとって意味のある活動に携わることである。
この実践は、1970年代、オランダにて始まったが、現在ではヨーロッパを中心に全世界へ広がってきており、日本においても重症心身障害児・者施設や知的障害児・者施設を中心に試みられつつある。
Wikipedia「スヌーズレン」より)

 

“建築医療”と“スヌーズレン”はまったく同じ概念ではありません。
建築医療では建築物そのものが治療効果に影響を及ぼす、と考えますが、スヌーズレンでは感覚刺激に満たされた物理的環境や雰囲気を用意してリラクゼーション効果をもたらす、と考えます。建築医療が建築物内での活動を想定しているのに対し、スヌーズレンは必ずしも屋内での活動に限定されません(スヌーズレン効果のある部屋をスヌーズレン・ルームと呼ぶようです)。

 

スヌーズレンの実践に取り組んでおられる、姫路獨協大学の教授、太田篤志先生という方がいらっしゃいます。
こちらのページにスヌーズレン・ルームの例が写真で掲載されています。
こちらをみると、さまざまな色の光が飛び交い、鏡が置かれ、不思議な形状のおもちゃが置かれています。
それらがもたらす感覚的な刺激が、こころと身体を楽しませ、「緊張がほぐれる」「穏やかになる」「積極的になる」といった療法的効果も報告されているそうです。
しかし、日本ではこうした効果が十分に浸透しているとは言えない状況なのだそうです。

 

「新しい感覚的刺激」を創り出すことは、アーティストがもっとも得意とするところと考えています。
色、光、形、素材、造形の組み合わせ・・・アーティストの中には、こうした実験的な取り組みをおこなっている方も多いでしょう。
ですから、このスヌーズレンの話を聞いたとき、アートとの親和性の良さを感じたのです。

 

dark candledark candle / Wim Vandenbussche

 

宮城県大崎市“感覚ミュージアム”という施設があります。
私自身、2度ほど行ったことがあるのですが、一般的な美術館や博物館と違い、展示されている作品を「見る」「聞く」「触る」「嗅ぐ」ことを通して体験していく形式をとっています。視覚だけでなく、聴覚・触覚・嗅覚を通して、様々な感覚を楽しんでいくことを目的としているのです。
スヌーズレンのように療法的効果を狙ったものではありませんが、その根底には同じ思想があるように感じます。
類似の体験ができる場所として、“ダイアログ・イン・ザ・ダーク”というものがあります。
これは完全な暗闇の中で、「暗闇のエキスパート」である全盲の方のナビゲーションの元、聴覚・触覚・嗅覚・味覚を最大限に活用して施設の中を進んでいく、というものです。
私も一度体験したことがありますが、視覚以外の感覚も想像以上に働いているのだな、ということを改めて実感してきました。

 

このように、アートにはまだまだたくさんの可能性があると、私は信じています。
ギャラリーや美術館におさまっているだけがアートではありません。
それはもっと、人の感覚の可能性を拓いていくものだと、私は思うのです。

 

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