“平均値”は人をだます
w'AND illustration代表の佐藤祐輔です。
ビジネスを行っていく上で、数字は意思決定のための協力なツールになります。
w'ANDでは「アートをビジネスとして成立させる」ことを目標のひとつに掲げていますので、ビジネス的な観点、つまり数字を使った意思決定も重要と考えています。
そのため、数字に関しても勉強してきました。
文系ビジネスマンでもわかる数字力の教科書: 当たり前なのに3%の人しかやってない仕事の数字をつかむ術 (だいわ文庫)
- 作者: 久保憂希也
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2012/12/12
- メディア: 文庫
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数字の見方、使い方について分かりやすく説明している本です。
ビジネスにおいて「その数字が何を意味しているか?」を考えられることが重要です。暗算や簿記ができても、その背景にある意味が理解できなければ数字には価値がありません。
今日は私が数字を見る上でもっとも重要だと感じている“平均値に対する考え方”についてお話しします。
“平均年収500万円”の会社に入るべきか?
「年収500万円」を高いと思う方も低いと思う方もいらっしゃるでしょう。
国税庁の「平成23年 民間給与実態統計調査」の結果によりますと、平成23年のサラリーマンの平均年収は409万円です。ここからすると、「年収500万円」は平均よりも高い収入になります。
では、「平均年収500万円」の会社は収益の良い会社だと判断しても良いでしょうか?
とある2つの会社を比較してみましょう。
あなたはA社とB社の2つの会社から内定をもらいました。
いずれも従業員数が100名、平均年収が500万円です。
仕事内容が大きく変わりませんから、どちらの会社に入っても収入は大きく変わらなそうです。
あなただったらどちらの会社を選びますか?
実はこの「平均年収500万円」にはカラクリがあります。
次のグラフをご覧ください。
これはA社の社員の年収を分析したものです。
年収500万円の社員が最も多く60名、それ以外の年収の社員はそれよりも少なくなっています。
一般的に「平均年収500万円」といわれてとっさに思い浮かべるのがこのようなグラフです。
では、B社はどのようになっているでしょうか?
B社もA社と同じように社員の年収を分析したところ、このような結果となりました。
最も多いのは年収300万円の60名。平均年収を引き上げているのは年収1000万円の30名です。
このような年収の分布になっていても、平均をとると年収500万円になるのです。
この場合、あなたはどちらの会社を選びますか?
平均値は人をだます
このように、平均値だけをみると同じように見えても、その実態が大きく異なる、ということは良くあります。
ですから、今回のA社とB社のように「分布」を見る必要があるのです。
国税庁の調査も同じです。この調査では平均年収409万円と出ていますが、その平均値がどのように構成されているかを見なければこの平均値が本当に意味しているところは分からないのです。
※ちなみに、国税庁調査結果を年齢別に見ると、50〜54歳の年収が485万円と最も高く、20〜24歳では247万円と若年層とほぼ倍の差があります。さらに時系列での変化を考慮すると面白い傾向が見えてくるかもしれません。
平均値は多くを語りません。
そのため、B社のように平均値を出してあたかも「年収500万円の社員がもっとも多い」と見せかけることもできてしまうのです。
このように、平均値を使って印象を操作することは日常的にあちこちで行われています。
数字は便利な反面、使い方によって人をだますこともできてしまいます。
数字をみるときは、「それが何を意味しているのか?」を考える習慣をつけたいものですね。
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