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w'ANDのつれづれノート

w'AND illustration代表の佐藤祐輔が考える絵のこと、仕事のこと、社会のこと・・・そんなことを日々つづっていきます。

絵描きのためのビジネス戦略6〜確率と行動指針〜

w'AND illustration代表の佐藤祐輔です。

 

これまで“ポジショニング”、“ターゲッティング”、“コンセプト”とビジネス戦略の基礎になる考え方をご紹介してきました。
今回は少し趣向を変えて、具体的な行動指針を売上目標から導き出す、という話をしましょう。 

 

その前にまず、宝くじの話をしたいと思います。
なぜ宝くじか、というと、投資効率を考える上で良い例になるからです。
宝くじは当選確率がはっきりしており、当選したときの回収金額も分かっています。
簡単な計算をすることで、宝くじの投資効率が分かります。

この計算から、ビジネスをする際の投資効率の重要性を理解してもらう、というのが今回の趣旨です。
確率の考え方に慣れると売上計画を立てやすくなり、売上を上げるための行動指針が得られるので、しっかりついてきていただけるとうれしいです。

 

宝くじの当選確率を計算する

まず宝くじの当選確率を計算していきましょう。
今回は2012年年末ジャンボ宝くじをモデルに考えます。

 

宝くじの当選番号は組と番の組み合わせでできています。
組は01組から100組までの100通り。
番は100000番〜199999番の100,000通り。
したがって、宝くじの券に記載されている番号の組み合わせは

  100 × 100,000 = 10,000,000

全部で1,000万通りになります。
つまり、理論上、宝くじ発券枚数の上限は1,000万枚ということになります。

 

次に、各等の当選条件を見てみましょう。

条件当選金額
1等 組と番が的中した一通り 4億円
1等前後賞 組が1等と同じで番が1等の1番違い 1億円
1等組違い賞 番が1等と同じで組が1等と異なる 10万円
2等 組と番が的中した三通り 3000万円
3等 組に関わらず番が的中 100万円
4等 番の下4桁が的中 10万円
5等 番の下2桁が的中 3000円
6等 番の下1桁が的中 300円


この条件から各等の当選確率を計算すると次のようになります。
1等 1/1000万 (1000万枚のうちの1枚なので)
1等前後賞 2/1000万 (1000万枚のうちの2枚なので)
1等組違い賞 99/1000万 (組は100通りだが1等が確定しているので99通り)
2等 3/1000万 (的中は3通りあるので)
3等 100/1000万 (番のみ的中なので、100通りの組が的中)

4等以降は下◯桁的中、という形なので、少し計算方法を変えます。
4等 1/10000 (下4桁は0〜9999の1万通りなので)
5等 1/100 (下2桁は0〜99の100通りなので)
6等 1/10 (下1桁は0〜9の10通りなので)

 

以上の計算結果から、各等の当選確率は次のようになります。

当選確率
1等 0.00001%
1等前後賞 0.00002%
1等組違い賞 0.00099%
2等 0.00003%
3等 0.00100%
4等 0.01000%
5等 1.00000%
6等 10.00000%

 

宝くじの投資効率

1等が確実に出るためには、1000万枚の宝くじを買う必要があります。
仮に1000万枚買ったときの回収金額を計算してみましょう。

当選枚数回収金額
1等 1 ¥400,000,000
1等前後賞 2 ¥200,000,000
1等組違い賞 99 ¥9,900,000
2等 3 ¥90,000,000
3等 100 ¥100,000,000
4等 1,000 ¥100,000,000
5等 100,000 ¥300,000,000
6等 1,000,000 ¥300,000,000
  合計 ¥1,499,900,000


宝くじを1000万枚買った場合、回収できる金額は約15億円です。
では宝くじ1000万枚の購入にはいくら必要でしょうか?
宝くじ1枚を300円とすると
  300 × 10,000,000 = 3,000,000,000
宝くじ1000万枚の購入には30億円必要です。

つまり、仮に宝くじを買い占めても半額しか回収できないことになります。
投資効率は-50%、と言うこともできますね。

この結果を見て、投資したお金の回収を目的として宝くじに投資しようと思うでしょうか?

誤解のないように補足しておきますと「宝くじの収益金のおよそ4割は全国の地方公共団体に納められ、公共事業などの社会貢献活動費として使われている」ということを忘れてはいけません。東京都では「子育て推進交付金」「認証保育所事業」「公園・街路整備」などに使われている、とあります。宝くじ1枚300円のうち、およそ120円は公園や道路、保育所の整備に使われている、と考えると、その120円は誰かの役にたっているのです。
このように確率計算をすると確かに宝くじの投資効率はマイナスになります。しかしその一部が「社会がより便利で快適になるために使われている」と考えると、日々生活をする上で十分回収できている、と考えることもできるのです。

 

売上目標を行動計画に落とし込む

このように物事を確率でとらえられるようになると、ビジネスをする上での行動指針が立てやすくなります。
以下、売上目標を行動計画に落とし込んでいくための大まかな考え方をお示しします。

 

ここで売上とはなにか、をあらためておさらいしておきましょう。
なにをいまさら、と思わず、復習と思って読んでください。

 

売上は一般に次の式で表せます。
  売上 = 商品単価 × 販売件数

ここから諸経費を差し引いたものが経常利益、つまり儲けになります。
  経常利益 = 売上 - 人件費 - 必要経費 - 仕入れ

皆さんが個人の絵描きであることを考えると、人件費と仕入れはほぼゼロと考えて良いでしょう。ということは、利益を最大化するためには売上をあげるか必要経費を落とすか、どちらかになります。しかし、アトリエにこもって作業をしている場合、必要経費といってもたかが知れています。したがって、儲けを増やすには売上を上げるのが一番手っ取り早い、ということになります。

※一般的な企業の場合はこの限りではありません。一般的な企業の場合、売上げよりも諸経費を減らす方が簡単です。そのためのさまざまな技術がありますが、ここではそこまで立ち入らないことにします。

 

さて、あらためて売上の式を眺めてみましょう。
  売上 = 商品単価 × 販売件数

この式から、売上を上げるには商品単価を上げるか販売件数を増やすか、いずれかの方法をとることになります。

 

商品単価を上げるのには慎重な検討が必要です。というのも、単価が高すぎると購入者数が減る可能性があり、単価が低すぎると販売件数を増やしても目標売上に達しない可能性があるからです。商品単価の決定には市場の動向、顧客ターゲットの層と心理、経済状況、商品の希少性と競合状態を考慮しなければなりません。
考え出すときりがないので、ここでは2冊の本を紹介するにとどめておきましょう。

価格の心理学 なぜ、カフェのコーヒーは「高い」と思わないのか?

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最新 行動経済学入門 「心」で読み解く景気とビジネス (朝日新書)

最新 行動経済学入門 「心」で読み解く景気とビジネス (朝日新書)

いずれも、心理学的な側面から人間の経済活動を捉えようとする試みです。商品の価格設定に大いに参考になるでしょう。機会があれば内容の一部をご紹介したいとおもいます。

 

では、もう一方の選択肢である「販売件数を増やす」について考えてみましょう。
あなたが個展での絵の販売を収益の柱にしていると想定します。
計算の簡略化のため、絵の単価を3万円に設定します。
一回の個展あたり、20枚の絵を展示して5枚売れる、と仮定します。
これを売上の式に当てはめると

  30,000 × 5 = 150,000

一回の個展あたり15万円の収益となります。
1人あたり1点購入した、とすると5人が購入したことになります。
このとき、期間中の来場者数を100名とすると、購入確率は2%になります。
では、絵の購入確率は何によって決まるでしょうか。
おそらく、次のような要因によって決まるでしょう。

  • 期間中の総来場者数
  • 来場者中のファンの割合
  • 丁寧に説明をした割合

※他にも要因はたくさんありますから、ご自身でしっかり考えてみてくださいね。

これを式に直すと次のようになります。

  販売件数 = 期間中の来場者数 × ファンの割合 × 丁寧に話しかけた割合

売上を上げる、つまり販売件数を増やすには上の3要素を増やせば良い、ということになります。ですが、来場者数が増えても、その中の見込み顧客の割合が少なければ意味がありません(冷やかしが増えると労力ばかりかかってしまいますよね)。ということは、ファンを増やすか個展会期中にお客さんに丁寧に声をかける率を増やせば良い、という行動指針が得られます。
もし、人に話しかけるのが自分だけでは難しいようなら、手伝ってくれる方を探すのも良いでしょう。絵の販売1件あたり10%の手数料を支払うとして、販売件数が倍になったらどうでしょうか。

  30,000 × 10 - (3,000 × 10) = 270,000

3万円の人件費がかかってしまいますが、いつもより12万円ほど売上が増えました。
とすれば、お手伝いをお願いする、というのも悪い選択ではない、ということになります。
「売上をあげるために今日もがんばりましょう!」と抽象的なかけ声をかけるよりもよほど明確です。

 

確率が行動指針を浮かび上がらせる

ものごとの成否の確率は「それをやるべきか否か」と「それをどのようにやるか」を考える指針になります。
たとえば冒頭にあげた宝くじの例のように、あらためて考えてみると投資効率がマイナスになってしまうようならば、それには投資をすべきではありません。なぜなら、宝くじの当選確率は自分の行動を変えたところで変えられないからです。
一方、売上に直結する販売確率は自分の行動によって変えられます。個展での販売の例のように、お客さんに丁寧に対応する回数を増やすだけで販売件数が増えるかもしれません。ファンの方への個展のお知らせをいつもより多くするのも良いかもしれません。

こうした行動指針はなんとなく「がんばろう」と思うだけでは見いだせません。
売上に関わる要因を見つけ出し、それを具体的に改善していくことで達成できるものです。

 

どうぞ、あなたのふだんの行動をあらためて見つめ直してみてください。
ふだん、あなたはどんな行動をしていますか?
その行動は売上にどんな影響を及ぼしているとおもいますか?
売上をあげたいとおもったら、その行動をどのように変えたら良いでしょうか?

売上目標の式を自分なりに作ってみてください。
それをじっくり眺めることで、今後の行動指針が得られるはずです。

 

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