w'ANDのつれづれノート

w'AND illustration代表の佐藤祐輔が考える絵のこと、仕事のこと、社会のこと・・・そんなことを日々つづっていきます。

“平均値”は人をだます

w'AND illustration代表の佐藤祐輔です。

 

ビジネスを行っていく上で、数字は意思決定のための協力なツールになります。
w'ANDでは「アートをビジネスとして成立させる」ことを目標のひとつに掲げていますので、ビジネス的な観点、つまり数字を使った意思決定も重要と考えています。
そのため、数字に関しても勉強してきました。

数字の見方、使い方について分かりやすく説明している本です。
ビジネスにおいて「その数字が何を意味しているか?」を考えられることが重要です。暗算や簿記ができても、その背景にある意味が理解できなければ数字には価値がありません。

 

今日は私が数字を見る上でもっとも重要だと感じている“平均値に対する考え方”についてお話しします。

 

“平均年収500万円”の会社に入るべきか?

 

Tina considering a morning bathTina considering a morning bath / Bernt Rostad

 

「年収500万円」を高いと思う方も低いと思う方もいらっしゃるでしょう。
国税庁の「平成23年 民間給与実態統計調査」の結果によりますと、平成23年のサラリーマンの平均年収は409万円です。ここからすると、「年収500万円」は平均よりも高い収入になります。

 

では、「平均年収500万円」の会社は収益の良い会社だと判断しても良いでしょうか?

 

とある2つの会社を比較してみましょう。
あなたはA社とB社の2つの会社から内定をもらいました。
いずれも従業員数が100名、平均年収が500万円です。
仕事内容が大きく変わりませんから、どちらの会社に入っても収入は大きく変わらなそうです。
あなただったらどちらの会社を選びますか?

 

実はこの「平均年収500万円」にはカラクリがあります。
次のグラフをご覧ください。

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これはA社の社員の年収を分析したものです。
年収500万円の社員が最も多く60名、それ以外の年収の社員はそれよりも少なくなっています。
一般的に「平均年収500万円」といわれてとっさに思い浮かべるのがこのようなグラフです。

では、B社はどのようになっているでしょうか?

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B社もA社と同じように社員の年収を分析したところ、このような結果となりました。
最も多いのは年収300万円の60名。平均年収を引き上げているのは年収1000万円の30名です。
このような年収の分布になっていても、平均をとると年収500万円になるのです。

 

この場合、あなたはどちらの会社を選びますか?

 

平均値は人をだます

 

when first we try to decieve.when first we try to decieve. / 顔なし

 

このように、平均値だけをみると同じように見えても、その実態が大きく異なる、ということは良くあります。
ですから、今回のA社とB社のように「分布」を見る必要があるのです。
国税庁の調査も同じです。この調査では平均年収409万円と出ていますが、その平均値がどのように構成されているかを見なければこの平均値が本当に意味しているところは分からないのです。
※ちなみに、国税庁調査結果を年齢別に見ると、50〜54歳の年収が485万円と最も高く、20〜24歳では247万円と若年層とほぼ倍の差があります。さらに時系列での変化を考慮すると面白い傾向が見えてくるかもしれません。

平均値は多くを語りません。
そのため、B社のように平均値を出してあたかも「年収500万円の社員がもっとも多い」と見せかけることもできてしまうのです。
このように、平均値を使って印象を操作することは日常的にあちこちで行われています。

 

数字は便利な反面、使い方によって人をだますこともできてしまいます。
数字をみるときは、「それが何を意味しているのか?」を考える習慣をつけたいものですね。

 

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この記事の中でご紹介している本、サイトはどれも有用です。どうぞ手にとってみてください。

金融業者としての覚悟

w'AND illustration代表の佐藤祐輔です。

 

「アートをビジネスとして成立させる」
w'AND illustrationが掲げる目標のひとつです。
この目標の実現のため、さまざまな業界の方とお話しをする機会を作っているところです。
コンサルティング、医療、金融、不動産・・・
お話しをしてみると、それぞれの業界に固有の悩みがあり、アートがそれを解決できる可能性もだんだん見えてきました。

 

こんなふうにいろいろな業界の方々とお話しをしていると、これまで思いもつかなかったような発想に出会うことがあります。
今日はとあるファンドの方から聞いた、「そのやり方はうまいな」と感心した金融商品と、「それってほんとに金融商品なの?」とおもってしまった金融商品の話です。

 

case1:診療報酬のタイムラグを利用した金融商品

 

Hospital Roberto Santos recebe novos médicos residentesHospital Roberto Santos recebe novos médicos residentes / Fotos Gov/Ba

 

これは医療機関を対象にした金融商品です。
私たちは保険のきく範囲の医療サービスを受ける場合、実際の医療費の3割を負担するだけで済みます。病院側に入るのは本来受け取れるはずの報酬の3割。残りの7割は、というとその2ヶ月後に国から医療報酬の形でお金がおりてきます。

サービスを提供してから実際に入金されるまで2ヶ月のタイムラグがあるのです。

病院によっては、このタイムラグが経営にとって命取りになることがあるそうです。
スタッフへの給与支払いや高額な医療機器の維持費など、病院の維持には多大なコストがかかります。
手元に現金がないと維持できない、というケースも多々あるそうです。

そこで、とあるファンドはあることを思いつきました。
その2ヶ月のタイムラグを埋めるため、診療報酬を債券化したのです。
病院が本来受け取る診療報酬を100万円としましょう。病院はすぐにでも現金がほしいのだけれど、国からお金がおちてくるのは2ヶ月後。そこで、このファンドは97万円を病院に支払い、満額の診療報酬を受け取る権利を買い取ります。2ヶ月後、ファンドは国から100万円を受け取ります。この差額の3万円がファンドの利益になります。

これは「診療報酬」という仕組みを巧みに利用した利益の出し方です。
簡単にいってしまえば「診療報酬を担保にした貸金」というところでしょう。
「こんなにまでして利益を出したいか?」とも思うのですが、もしこの仕組みのおかげで病院がつぶれずに済んでいるとしたら、私たちにとってもメリットのあることです。

 

同じようなことは飲食店でのクレジット決済でも行われているそうです。
クレジット決済の場合、店側に現金が入るのが決済の2週間後。そのタイムラグをファンドが埋めてあげることで飲食店の資金繰りをしやすくしています。
もしこのおかげでお気に入りのレストランがうまく回っているとしたら・・・と考えると、大事な仕組みのようにも思えてきます。

 

case2:展覧会の資金集めのためのファンド

 

The Story of TutankhamunThe Story of Tutankhamun / get directly down

 

このファンドでは展覧会の企画・運営も手がけるそうです。
最近のものでは2012年の大規模なエジプト展でした。
これは私たちが通常「金融業」と聞いて思い浮かべるものから少しかけ離れているように思います。

 

エジプト展のような大規模な展覧会を行うには多額の費用がかかります。
エジプト政府と交渉し、展示品を借り受け、日本に輸送し、日本で会場を用意し、設営や警備などのスタッフを雇う、これらに数億円のコストがかかります。しかも、展覧会をやったからといって必ずしも利益が出るとはかぎりません。
そこでこのファンドは一種のリスク商品として、資金を募りました。
たとえば、一口10万円、展示会の収益により数%のリターンを出資者にバック。ただし、展覧会が赤字の場合は元本が減る・・・このようなリスク商品です。

 

こんな金融商品があることに私はびっくりしました。
「金融業」というと「あちらからこちらにお金を動かしてその差額で設ける虚業」という、あまり良いイメージをもっていませんでした。ところが、「展覧会の企画」のような実際に形のあるものにお金を出していく、という仕事もしています。こうした仕事は単純に「虚業」とは呼べません。

 

 

私たちは実際はよく知らないのに、イメージだけで物事を判断してしまいがちです。
けれども実際にこうして話を聞いてみると、意外な発見があるものです。

 

ちなみに、私が話をうかがったファンドは「なるべく元本を減らさない運用」を理念としているそうです。
母体は金融ファンドなのですが、その他にIT会社、飲食店、アパレルなどの会社をもち、万が一ファンドが何らかの理由で大幅に資金を減らしてしまった場合、それら子会社を売却することで資金を保全する、ということをやっています。
そこまでしてファンドを運営しようとするところに、ビジネスパーソンとしての覚悟を感じたのでした。

 

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もしかしたら金融業に対するマイナスイメージは、お金そのものに対する悪いイメージに原因があるのかもしれません。私自身、最近になってようやく、お金に対するマイナスイメージがなくなってきました。

昔はそれこそ、「貴族のお抱え画家になれば一生困らない」なんてこともありましたが、現代ではそんなことは期待できません。絵描きが生き残っていくためにも、やはりビジネス感覚は必須だとおもっています。

ブログ毎日更新を一日休んでみました。

w'AND illustration代表の佐藤祐輔です。

 

31日間続いてきていたブログの毎日更新を休みました。
花粉症なのか風邪なのか、くしゃみ鼻水、目のかゆみがひどいのにくわえ、連日の外出もたたって疲労がたまっていたためです。
顔の周辺がずっともやっとするような、かゆいような、なんともいえない“もや”のようなものに包まれている感じです。
花粉症の線が濃厚かもしれません。
目を洗ったり、生理食塩水で鼻をうがいすると症状が緩和するので。

 

ブログを休むことに非常に強い葛藤がありました。
大きくは2つの理由からです。

 

理由1:事業上の効果

3-D Line Graph3-D Line Graph / k.steudel

ブログを毎日更新し続けることの効果もあちこちで言われています。

  • 毎日更新することでGoogleに「アクティブなサイト」と認定されて検索順位が上がる。
  • コンテンツが増えていくのでSEO対策としても効果がある。
  • 頻繁に更新することで読者の目に止まりやすくなり、結果読者獲得につながる。

などなど。

 

こうした効果は、ブログをw'ANDの事業活動の一部として位置づけている以上、重要です。
仕事上の理由から、ブログ継続を止めたくない、と感じていました。

 

もちろん、ここには「ブログを休むと仕事に支障が出るかもしれない」という不安感も混ざっています。

 

理由2:サンクコスト効果

250_20121114_bt_chumley_bear_cruise250_20121114_bt_chumley_bear_cruise / btaroli

「せっかく31日続いたのだから、連続記録を32日に伸ばしたい」という気持ちもあります。
これは仕事がどう、とかSEOがどう、といった実際的な理由ではありません。
単純な「もうちょっとやれば・・・」という心理です。

この心理はギャンブルをやっているときの心理に近いかもしれません。
ギャンブルで負けがこんできたとき、ついつい「あと1万円出せば取り返せる!」と思ってしまいがちです。
ギャンブルではこの「あとちょっと・・・」が命取りになることがよくあります。

この心理を「サンクコスト効果」と呼びます。
サンクコストとは

ある経済活動・投資活動にいったん投下され、その後にどのような決定(活動の縮小・中止など)を行っても回収することができない費用のこと。投資の評価・意思決定においては、過去の出来事であるサンクコストは一切に考慮に入れてはならず、評価時点以降に起こり得る支出と期待できる利益だけを判断基準とするように推奨している。
@IT情報マネジメント「サンクコスト」

ギャンブルの例で言えば、負けがこんできていることを「さらにゲームを続けるか」の意思決定の材料に持ち込んではいけません。
同じように「今日ブログを書くべきか否か」という意思決定に「ここまで31日間ブログを続けてきた労力」は評価に入れてはいけないのです。にも関わらず、どうしても「ここまでがんばってきたのに・・・」と思ってしまうのは人の性というものです。

 

 

冒頭でも書いた通り、「3月20日はブログを書かない」と決めました。
2つの葛藤がありましたが、決め手となったのは「人間は完璧ではない」という考えです。
“「継続する意志」を鍛えるたった5つのコツ”でも書いたように、なにかを継続するにはコツがあります。
そのうちの一つが「完璧主義にならないこと」。
完璧主義の人の多くが、「30日続けてきたけど昨日ついつい休んでしまった、だから自分はだめなんだ」と考え、そこで続けるのをやめてしまいます。ちょっとの失敗ですべてがだめになってしまったように錯覚してしまうのです。

たとえば1年間ブログを書き続けようとしたとき、その1年の間には何が起こるかわかりません。
風邪で寝込むかもしれないし、パソコンが壊れてしまうかもしれない、あるいは隕石が降ってきて家がなくなってしまうかもしれません。
そんな状況で続けていくのは実質的に不可能です。
そもそも「完璧であろうとすること」事態が不可能なことなのです。
だから、こんなふうに考えるのです。

今日休んだから31日連続更新で止まってしまった。けれども、明日書けば33日中32日更新したことになる。達成率はおよそ97%だからずいぶん良い数字じゃないか。

 

そんなわけで、一日お休みさせていただきましたが、また今日から更新を続けていきたいと思います。

 

関連記事:

物事を継続していくのにもコツがあったのでした。

「途中でやめてしまった」というのはネガティブな感情に結びつきがちです。けれど、それを無理矢理ポジティブにもっていく必要はないのです。

桜の小盆栽、あるいは可能性の総体

w'AND illustration代表の佐藤祐輔です。

 

先日、桜の小盆栽を購入しました。
丸ビルの植木屋さんで見かけ、ずっと気になっていたのです。
お目当ての桜はもう売れてしまっていましたが、なかなかかわいらしい枝振りの桜が手に入りました。

桜の小盆栽

花はもう終わってしまったので葉しかありませんが、これはこれで良いものです。
それに来年また咲きますしね。
来年の春の楽しみが増えました。

 

私は植物、とくに木に深い愛着があるようです。
植木を選ぶときも、一年草や蔓植物は選びません。小さくても構わないので木を選びます。
おそらく「育てる楽しみ」が木にはあるからなのでしょう。
小さな鉢に植えられている小さな木を見ると、それが大きく育っていく姿を想像します。
もちろん、山にはえているような大きな木になるには何十年もかかるでしょう。
それでも、そのように大きく育っていく“可能性”をイメージとして見ているのです。

 

 

今から4〜5年前のことです。
私がまだ仙台に住み、東北大学に勤めていた頃。

勤務先の東北大学工学研究科は青葉山にあります。
周りが山に囲まれ、キャンパスから少し離れるとうっそうとした森の中に入っていくことができます。
そんな木々を眺めていたある日、一本の木に目が止まりました。
正確に言うと、根が同じで太い幹が二本に分かれた、一見すると二本に見える一本の木です。

 

もともと根がひとつですから、本来は一本の幹になるはずでした。
それがなんらかの理由で二本の幹に分かれている。
私には、その木がふたつの可能性を同時に生きているように見えたのです。

 

手塚治虫の「八角形の館」という作品をごぞんじでしょうか。
Wikipediaによれば、このようなあらすじの漫画です。

進学するか漫画家になるか悩んでいた熊隆一の前に、不思議な老婆が現れ、コインを渡してその出目で将来を決めろと勧める。コインの出目は漫画家を示していたが、隆一は不安そうだった。それを見た老婆は、「もし漫画家でいることが嫌になったら、八角形の館に来い。そうすれば一度だけもうひとつの人生に変わることができる。ただし二度目は許されない」と言い残して消えた。漫画家になった隆一は多くの連載を抱える人気作家として成功したが、一度だけファンの好みを無視した作品を描き、それがきっかけで人気が落ちてしまう。漫画家に失望した隆一は八角形の館で人生を切り替えた。別の世界では隆一はボクサーになっていたが、ここでも意に添わない試合をする結果となり、ボクサーにも失望する。その時、隆一に破滅が訪れた。

漫画の主人公、隆一は漫画家かボクサーのいずれかの人生を生きます。
ところが、私の見た二本に幹が分かれた木は、隆一が漫画家の人生もボクサーの人生も、同時に生きているようなものとして見えたのです。

 

この見え方は自分にとって衝撃的でした。
おそらく、一本の幹になることもできたでしょう。もしかしたら二本に分かれることも可能性のひとつとして入っていたのかもしれません。
いずれにせよ、そうした様々な可能性が、この木には宿っていたのです。
二本の幹に分かれたことによって、この木は一本の幹になる可能性をなくしましたが、この先、どのように成長していくかは様々な可能性を秘めています。つまり、この木は“可能性の総体”としてそこに存在しているのです。

 

 

先日購入した桜の小盆栽を眺めていると、枝のあちこちから小さな芽が出ようとしています。これが葉になり、あるいは来年花を咲かせるもとになるのでしょうか。
そうした可能性をこの桜ももっています。
そして、たとえば30年後に大きく育つ可能性をイメージとして眺めながら、日々の世話をしていこうと思うのです。

 

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やはり私は植物に愛着を抱いているようなのです。

日常のちょっとしたことから学ぶこと、気づくことはたくさんあります。

料理で鍛えられる4つのビジネススキル+α

w'AND illustration代表の佐藤祐輔です。

 

今回は「料理はビジネススキルを磨くのに最適である」ということをお話ししましょう。

 

Cooking!Cooking! / Webb Zahn

 

料理をしていると、五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)を全部使います。
舌で味を確認するのはもちろん、目で材料の良し悪しや火の通り具合を判断し、耳で煮え具合や焼ける過程を確認し、手で固さを確認し、鼻で臭いを確認します。
このように、料理をしていると五感をフル稼働させるため、効率よくすべての感覚を磨くことができます。
"五感を研ぎ澄ましてビジネスに取り組むべき理由"でも書いたように、五感はビジネスの上でも重要な役割を果たします。

 

最近、それ以外にも料理をすることで鍛えられる様々なビジネススキルがあることに気づきました。
それが次の4つのスキルです。

  1. 予算立案・折衝スキル
  2. サプライチェーンマネジメントスキル
  3. マーケティングスキル
  4. タイムマネジメントスキル

 

1.予算立案・折衝スキル

 

Pres. Wilson addressing Congress  (LOC)Pres. Wilson addressing Congress (LOC) / The Library of Congress

 

一般家庭では日々のご飯に潤沢にお金をかけることはできません。
そのため、限られた予算の範囲内で日々のご飯を設計する必要があります。
まず、何人分の食事を作らなければならないのか、から考える必要があります。
飢えてしまってはいけませんから、飢えないだけの量の食事を確保する必要があるでしょう。
しかし、あなたが得られる資金には限りがあります。それにはあらかじめ他の使途もあるでしょうから、食事にかけられる予算は決して潤沢ではないでしょう。ですから、限られた予算の範囲内で飢えないだけの食事をいかに確保できるか、を設計する必要がでてくるのです。

 

たとえば家族が増えるなどの事態が発生したとき、これまでと同じ予算では足りなくなるかもしれません。そうしたとき、予算を増やすために折衝しなければならないこともありうるでしょう。あなたは自らの思いをプレゼンテーションし、予算を獲得しなければなりません。

 

これらのスキルはビジネスにおいて予算を立案し、ときに予算確保の折衝するのにきっと役立つでしょう。

 

2.サプライチェーンマネジメントスキル

 

Supply Excellence 2010Supply Excellence 2010 / US Army Africa

 

東日本大震災で交通網が寸断され、物資はあるのに必要なところに届かない、という事態が発生しました。
2011年10月にタイで発生した大洪水では、多くの企業の工場が浸水し、製品製造が続けられなくなる、という事態が発生しました。
いずれも、サプラーチェーンが寸断されてしまったがために、大きな打撃を与えた例です。

 

日々の料理でも同じです。
近所のスーパーがある日突然倒産する、という事態はいつでも起こりえます。
これまで安く買えていた商品が何らかの影響で突然高騰してしまう、ということもあり得るでしょう。あるいは地震のような大災害で物資そのものが枯渇する、というリスクだって考えられます。
そうした事態にあっても、我々には日々のご飯が必要です。

 

スーパーの倒産リスクに備えて2番手に使えるスーパーを発掘しておく必要があるでしょう。
高騰した商品の代替になるような商品を見つけておく必要もあるでしょう。
物資が枯渇したとしたら、自分で物資を何らかの方法で調達してこなければなりません。

 

このように、日々のご飯を安定供給するためには、サプライチェーンマネジメントが適切になされている必要があるのです。
このスキルを活かすことで、あなたの会社のサプライチェーンを最適化し、かつ不測の事態にも備えられるようなグランドデザインが描けるようになるでしょう。

 

3.マーケティングスキル

 

Twitterマーケティングなう。 @farmpartyTwitterマーケティングなう。 @farmparty / masahiko

 

ビジネスの世界でマーケティングは非常に重要です。
日々のご飯を作るにあたっても、マーケティングは必須です。

 

お子さんやパートナーの好き嫌いをきちんと把握していますか?
最近の体調でどんな料理が喜ばれるかリサーチできていますか?
世間の料理トレンド(=旬)には敏感になっていますか?
あなたはあなたの料理をお子さんやパートナーが欲する形で提供できていますか?

 

人が嫌がる料理を提供していませんか?
自分の満足のためだけに無駄に予算をかけていませんか?
適切な色合いが使われ、見た目に食べたいと思える盛りつけになっていますか?

 

より多く食べてもらうためには、こうしたリサーチが必須なはずです。

 

こうした発想は極めてマーケティング的です。
これらの感覚が磨かれれば、あなたのマーケティングスキルは格段に向上し、これまでなかなか売れなかった商品もあなたの手でヒット商品に変えていくことができるでしょう。

 

4.タイムマネジメントスキル

 

Watch the watchWatch the watch / nicolasnova

 

料理をつくるとき、タイムマネジメントが重要になってきます。

 

たとえばお子さんにできたてのご飯を食べさせたいとき。
何時にお子さんに食べさせたいですか?
そのためには、何時から作り始めるのが適切ですか?
すべての料理ができたての状態で提供できるためには、どの順番で作ったら良いでしょう?

 

これらをうまくこなすためには、最適化された段取りを組む必要があります。
手がはやくないならはやくないなりに、「どの作業にどれだけ時間がかかるのか」がざっくりとでも把握できていれば、おなかをすかせたお子さんをいつまでも待たせることもなくなるでしょう。

逆に、旦那さんにわざと冷たいご飯を食べさせるには何時までに冷たくなるか、を逆算すれば良いのです。

 

これが適切にできるようになれば、ビジネスの現場でもあなたのタイムマネジメントスキルはきっと上司に評価されるはずです。

 

 

これらのスキルはあくまで一般家庭を想定しています。状況により、他のスキルも鍛えられるはずです。
たとえば・・・

  • 一人暮らしの方でしたら、好きな物だけに偏らないようにするためにセルフマネジメントスキルが鍛えられるでしょう。
  • お子さんがお手伝いしてくれるようなお年頃でしたら、部下を使うスキルが鍛えられるかもしれません。
  • もしあなたが謎の創作料理を作るのがお好きでしたら、それを躊躇なく試食してもらうためにプレゼンテーションスキルが磨かれていくに違いありません。

 

さぁ、今日からいっしょうけんめい料理をして、第一線で活躍できるビジネスパーソンを目指しましょう。

 

関連記事:
五感を研ぎ澄ましてビジネスに取り組むべき理由(2013年3月16日)
スヌーズレンとアートが拓く可能性(2013年3月14日)

夢・野心・挑戦

w'AND illustration代表の佐藤祐輔です。

 

「女にも野心がある。ただ、女はそれを夢と呼ぶのです。」

中央線に乗っていると、東京経済大学のこんな広告コピーが目に入ってきます。
このコピーに対してネット上に「単なる言葉のすりかえ」という批判が散見されました。
私自身もなんとなく違和感を覚えます。
もちろん、これは35歳男性の感覚であって、広告のターゲットである受験を控えた17歳、18歳の女性にどう響くのかは分かりません。

 

先日、こんなことがありました。
とある経営者向けのパーティーに参加したときのことです。
ある会社の社長さんと名刺交換させていただき、私の事業構想をお話ししました。
将来的にやりたいプロジェクト、そのプロジェクトの価値、社会に与えるであろうインパクト。
一通り話し終えたところでその社長さんがぼそっとひとこと。

「きみ、ずいぶん野心的だねぇ」

ここでどきっとしました。
「野心」という言葉に対してあまりよくないイメージをもっていたためでしょう。
「野心」というと「人を蹴落としてまで自分の手に入れたいものを手に入れる、欲の皮の突っ張ったような人物」というイメージです。
このイメージが、東京経済大学の広告コピーに対する違和感の源にもなったのでしょう。

 

大辞林の「野心」の項には次のようにあります。

1.現状よりもさらに高い権力・名誉・財力などを得ようとする心。ひそかにいだいている分をこえた望み。
2.(野の獣が人になれないように)なれ服さないで,害そうとする心。謀反の心。 「此の謀いかなる-の者が京都へ告げたりけん/太平記 17」


大辞泉では次のようにありました。

1.ひそかに抱く、大きな望み。また、身分不相応のよくない望み。野望。「政治家になりたいという―に燃える」「政権奪取の―をもつ」
2.新しいことに取り組もうとする気持ち。「―作」
3.野生の動物が人に馴れずに歯向かうように、人に馴れ服さず害を及ぼそうとする心。「但し―改め難くして、情(こころ)に猶予を懐けり」〈三教指帰・下〉

 

一般的にイメージされている「野心」は大辞林の1、大辞泉の1のイメージでしょう。
大辞林の2、大辞泉の3は私のイメージだと「野性」の方がよりぴったりきます。

私がw'ANDの事業でやろうとしていることは大辞泉の2、「新しいことに取り組む」ということです。
それを私自身の言葉でいうと「チャレンジ」「挑戦」であり、もともともっていた「野心」のイメージとはことなります。
それは東京経済大学の広告のような「夢」でもありません。
私は自分の事業を徹底的に現実的に考えているからです。
※ここで今度は「夢」の定義やイメージの違いが関わってくるのですが、その話はここではやめておきましょう。

先日の社長さんはどのような意味を込めて「野心」といったのでしょうか。

五感を研ぎ澄ましてビジネスに取り組むべき理由

w'AND illustration代表の佐藤祐輔です。

 

本田宗一郎さんのこんなエピソードを聞いたことがあります。

レース場でマシンの性能チェックをしていたときのこと。本田宗一郎さんは路面に腹這いになって表面を観察し、触って感触を確かめ、路面を伝わってくるマシンの音を聴いたそうです。五感のすべてを使ってレース場とマシンの状態をチェックしていたのです。

技術者としても優秀だった本田宗一郎さんらしいエピソードです。

 

Full Speed Ahead...Full Speed Ahead... / jdanvers

 

技術を磨くには、すべての感覚を総動員する必要がある、と考えています。


和食が良い例でしょう。
和食は味の良さはもちろんですが、見た目の美しさも重視されます。それをいただく部屋の雰囲気、空気、音、そうしたものがすべて一体となって、和食というものが演出されます。本当に素晴らしい和食とは、食事だけでなく、その他の要素も組み合わされて初めて完成するのです。そのためには、味覚だけでなく、視覚、触覚、嗅覚、聴覚、すべての感覚を動員する必要があるのです。

 

私はかつて印刷会社に勤めていました。
そのときのベテラン社員さんのなかに、こんな方がいらっしゃいました。
親指と人差し指で挟むだけで紙の厚さが分かる、ちょっとなめればそれがどの紙なのか分かる、という方です。長年紙を扱ってきたために、それぞれの紙の微妙な違いに精通していった結果でした。

 

私自身は絵描きですから、視覚は鋭い方だと思います。
それに加え、触覚が発達したと思っています。
ペンや絵筆をもって絵を描くため、筆圧の細かな違い、紙の手触り、曲線の動き、そうしたものに対する感覚が発達したのだろうと考えています。
今後は空間や雰囲気に対する感覚をもっと鋭敏にしたいと考えています。

 

Have you met with your Concierge Extraordinaire? 05-22-2012 © Karel Chladek - C2-MTLHave you met with your Concierge Extraordinaire? 05-22-2012 © Karel Chladek - C2-MTL / C2-MTL

 

こうした「感覚」はビジネスの現場でも重要と考えます。

 

巷には様々なビジネス本があふれています。
「成功する接客」だったり「売上げがあがるホームページ作り」だったり「儲かるデザイン」だったり。
もちろん、こうした本は基礎知識として知っておいて損はないでしょう。
しかし、これらの知識はあくまで一般論でしかありません。

実際の現場で接客してみると、本には書いていない事態が多々発生するでしょう。
本に書いてある通りにやっているのになかなか売れない、お客様を怒らせてしまった、クレーム問題にまで発展してしまった・・・
なぜこうした事態になってしまうのでしょうか?
個々のケースには一般論では語りきれない様々な個別の事情があるからです。

それを敏感に察知するのは、知識や理屈ではなく、五感です。

 

本田宗一郎さんがなぜ路面に腹這いになってまで状態をチェックしたのか。
それはレース場によって、その日の天気や温度によって、状態が変わるからです。
その違いを察知できなければ、「この場所、このとき」に最適な状態にマシンをチューニングすることができません。
だからこそ、五感を総動員する必要があるのです。

 

これは接客でお客様に対応する場合でも同じです。
お客様には様々な方がいらっしゃいます。
本に書いてあるような型通りの方ばかりではありません。
それを敏感に見分けるためにも、五感を研ぎすます必要があるのです。

 

みなさんは知識を詰め込みすぎて頭でっかちになっていませんか?
知識も大事ですが、それと同時にもっと、五感も研ぎすませていきましょう。
ビジネスのやり方がきっと変わっていくはずです。

 

関連記事:
スヌーズレンとアートが拓く可能性(2013年3月14日)
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