w'ANDのつれづれノート

w'AND illustration代表の佐藤祐輔が考える絵のこと、仕事のこと、社会のこと・・・そんなことを日々つづっていきます。

リスクをとる〜安いものには理由がある〜

w'AND illustration代表の佐藤祐輔です。

 

昨年に初めてお会いしてからなにかとご縁のあるego factoryの阿部さんと打ち合わせをしてきました。

 

阿部さんは「a・priori」(アプリオリ)というフリーペーパーを発行しておられます。
フリーペーパーといっても、駅やお店のラックに設置されているようなものではありません。紙面にアーティストの手によるビジュアルアート作品を使った、「写真集」「作品集」に近いものです。一見すると市販の雑誌のようですが、あくまでもフリーペーパーです。
※各所美術館やギャラリーなどに設置されておりますが、すぐになくなってしまうそうです。

 

この阿部さんが、「a・priori」の次の展開として、今年の春に「aprioriWEB」を発足させます。
阿部さんをバックアップしておられるGallery Chordさんとの顔合わせも兼ね、いろいろとお話をうかがってきたのでした。

 

Artist in Action / Dumbo Arts Center: Art Under the Bridge Festival 2009 / 20090926.10D.54904.P1.L1.BW / SMLArtist in Action / Dumbo Arts Center: Art Under the Bridge Festival 2009 / 20090926.10D.54904.P1.L1.BW / SML / See-ming Lee 李思明 SML

 

「アートをビジネスとしてきちんと成立させる」というのが私の理念です。
その考え方は阿部さん、Gallery Chordさんとも共通していました。
“絵描きにもビジネス感覚が必要な理由”にも書いたように、良い絵を描いたからといって、それだけではお金にはなりません。


今現在の社会の仕組みでは、お金は何かしらの活動を継続していくのに必要なものです。だから、絵を続けていきたいと考えるならば、そこからいかにお金を得るか、ということもきちんと考える必要があるのです。
※もちろん、お金の必然性に関しては様々な意見があろうかと思いますが、“現段階では”お金がもっとも効率的な手段だと、私は考えています。

 

【aprioriWEB募集要項】をご覧いただくとお分かりかと思いますが、この活動に参加するには年会費が必要になります。
お金がかかる、ということで躊躇される方も多いでしょう。
けれど、私はそれで良いと思うのです。

 

イラストなどを無料で登録できるサイトがだいぶ増えてきました。
見ると、膨大な人数が登録されています。
無料で誰でも登録できる、という敷居の低さがうけたようです。

 

ところが、その実態をよくみてみると、極少数の優秀なイラストレーターさんとその他大勢、というように二極化しているようです。
売れる方はますます目立ち、そうでない方はどんどん埋もれていく、という流れが出来上がっています。
こうした無料登録サイトで実際にビジネスになっている方はほんのわずかでしょう。
ビジネスを求めていない方にとってはそれで十分なのでしょうが、こうしたサイトをビジネスに結びつけようと思うととても難しいと思います。

 

対して、aprioriWEBでは登録費用がかかります。
それはリスクをとることと同じです。
登録費用が確実に回収できるとは限らない、というリスクです。
けれども、登録費用はaprioriの営業活動などに使われるため、費用回収の確率は格段に高まります。
無料登録サイトは場を提供するだけですから、費用を負担するというリスクはありませんが、ビジネスにつながる確率は大幅に低下します。

 

無料であることにも、有料であることにも、それぞれ理由があるのです。
安ければいいというものでもないし、高ければいいというものでもない。
お金を払うことによって得られる効果が自分にとって価値あるものなのかどうか、を判断する目が必要になるのです。

“顧客におびえる日本人〜お客様は神様じゃない〜”に書いたLCCの例が分かりやすいでしょう。LCCは格安で飛行機を利用できるサービスですが、オペレーション効率化のため、欠航や遅延のリスクが通常の航空会社よりも格段に高くなっています。

 

Taking a test at the Real Estate Investing CollegeTaking a test at the Real Estate Investing College / Casey Serin

 

ビジネスの基本は「投資と回収」と私は考えています。
小売店がその典型です。
商品を仕入れ(=投資)、付加価値をつけて販売する(=回収)という流れにのせることで収益を上げていきます。
仕入れ、つまり投資をしなければ、そもそも利益を得ることはできません。

 

リスクをとる、ということはビジネスに対して本気で取り組む姿勢がある、ということです。利益だけを求めてリスクを負わなければ、結局のところ、利益を得ることはできないでしょう。

“与沢翼氏と絵描きとしての矜持”で書いたように、与沢氏は短期間で利益をあげるため、はじめに5,000万円の損失を被るリスクを負っています。与沢氏には勝算があったのでしょうが、一般の人にとっては5,000万円の損失を被るリスクはなかなか負えません。

※もちろんリスクをとるにしても、なるべくリスクを小さくしたいものです。そのために様々なリスク回避の手法が考え出されていますが、それはまた別の話。 

 

現代の資本主義の仕組みには様々な議論がありますが、少なくとも現段階では、利益を得るにはそれに見合ったリスクを負う必要があるのです。