w'ANDのつれづれノート

w'AND illustration代表の佐藤祐輔が考える絵のこと、仕事のこと、社会のこと・・・そんなことを日々つづっていきます。

絵描きのためのビジネス戦略3〜絵描きとポジショニング〜

w'AND illustration代表の佐藤祐輔です。

 

3週間ほど間があいてしまいました。
この間、w'ANDをとりまく状況が大きく変わってきました。
具体的な内容はまだお話しできません。
5月後半にはなにかしらご報告できるかと思います。

 

さて、“絵描きのためのビジネス戦略”の3回目です。
今回は“ポジショニング”についてです。

 

前回は「ビジネスの目的は収益をあげること」ということを書きました。
収益をあげるのは生活基盤を安定させ、事業を継続していくための必須条件です。
どんなに崇高な理念を掲げていても、収益があげられなければ趣味でしかありません。
では、収益をあげるためには具体的に何をしたら良いのでしょうか?

今回から数回に分けて、絵描きが収益をあげるための戦略を考えていきたいと思います。

 

コーヒーショップにおける“ポジショニング”

Starbucks at DFW Airport Photo i001 by Grant WickesStarbucks at DFW Airport Photo i001 by Grant Wickes / Grant Wickes

 

マーケティングの用語に“ポジショニング”という言葉があります。
“ポジショニング”とは「あなたの提供する商品・サービスの市場における位置づけ」です。

 

コーヒーショップチェーンを例にとりましょう。
皆様はスターバックスエクセルシオールベローチェ、ドトール、サンマルクの5つのうち、どれが一番お好みですか?

私は1時間〜2時間くらいひとりで本を読むならコーヒー1杯180円のベローチェを選びます。
しかし、ベローチェのスイーツ類はあまり美味しくないため、スイーツが食べたいときはサンマルクです。
すこし小腹がすいた時はドトールでサンドイッチ類をテイクアウト。
人と会ってゆったり話しをするときはチェーン店はつかいません。

 

このように、コーヒーショップチェーンといっても様々な種類があります。
それぞれに特徴があり、こちらが求めているもの(安いコーヒー、美味しいスイーツ、人と話す親密な空間)によって使い分けることができます。
逆に考えると、それぞれのコーヒーショップが主に提供するものを変えて客層をずらすことで、市場での真正面勝負を避けている、と見ることもできます。

 

スターバックスとドトールを比較してみましょう。
スターバックスには次のような特徴があります。

  1. 店内禁煙
  2. 広い店内とゆったり座れるスペース
  3. 家では作れない種類のコーヒー
  4. フード類は少ない

ドトールの特徴を対応させると次のようになるでしょうか。

  1. 店内喫煙可
  2. 店内はあまり広くなく一人当たりの面積が狭い
  3. 主力は一般的なコーヒー
  4. ランチや軽食に最適なフード類が豊富

この比較から浮かび上がるスターバックスとドトールの大きな違いは「回転率」です。
店内が広くゆったりできるスターバックスはお客さんの滞在時間が長くなる傾向があります。対するドトールを思い浮かべると、ゆったり座れる椅子がなく、お世辞にも「居心地が良い」とは思えません。だから、ドトールではお客さんの滞在時間は短くなります。
スターバックスはドトールに比べて回転率が悪くなるため、客単価をあげる必要があります。そのため、通常のコーヒー以外に様々な珍しいコーヒーを用意して一品あたりの価格をあげています。一方、ドトールは回転率がいいため、客単価が安くてもよく、一品あたりの価格を低く抑えられます。
ひとりでゆったりとした時間を過ごしたい人はスターバックスに足を運ぶでしょう。一方で短時間でお昼を済ませたい人やアポイントメントまでのちょっとの時間を埋めたい人はドトールを選ぶのではないでしょうか。

このように、コーヒーショップチェーンといっても提供する商品やサービス、価格設定、店内の作りによって自分たちが市場に対して提供している価値を変えているのです。
これが“ポジショニング”です。

 

絵描きにとっての“ポジショニング”

Marketing MapMarketing Map / miss_rogue

 

では、皆様のような絵描きはどのようにポジショニングをしたら良いでしょうか。
といっても、難しいことを考える必要はありません。


実はもうすでに、あなたの市場におけるポジションはほとんど決まっているのです。

 

通常なにかの事業を始めるとき、最初に「どんな商品やサービスを提供するか?」を考えます。
飲食店をやるのか、印刷屋をやるのか、電機メーカーをやるのか、医者になるのか。
そのために市場の成長性やら競合他社の存在やら、あれこれ考えなければなりません。

 

けれど、絵描きの場合はそれを思い悩む必要がありません。
なぜなら、あなたはすでに“絵描き”だからです。
“絵描きであること”があなたが市場に対してすでにとっているポジションなのです。

 

では、ある人が「飲食店をやろう」と思ったとします。
次に考えるのはなんでしょう?

そうです、「どんなジャンルの飲食店をやるか?」です。
和食、イタリアン、フレンチ、スイーツ、ファストフード、いろんな選択肢があります。

 

しかし、ここでもあなたは思い悩む必要がありません。
あなたの描いている絵はどんな絵ですか?
かわいい系ですか?
クール系ですか?
きれい系ですか?
グロテスク系ですか?
これによってあなたが市場に提供できる商品カテゴリー(=絵のジャンル)が決まります。

 

これは同時に、あなたの絵を必要とする人を絞り込むことを意味します。
赤ちゃんのいるおかあさんはかわいい系の絵を必要とするでしょうが、グロテスク系の絵は必要としないでしょう。
ハードロックが好みの男性ならクール系の絵を必要とし、かわいい系の絵は必要としないでしょう。
このように、あなたは「絵描きであること」と「あなたの描いている絵のジャンル」によってすでにポジショニングをしているのです。

もし「きちんと収益をあげていきたい」とお考えならば、「自分は市場においてあるポジションをとっている」ということを明確に意識してください。
ポジションをとるということは顧客を絞り込むことです。
顧客を絞り込む、ということは、スターバックスとドトールの違いでみたように、ビジネス戦略を練る上で重要な要素になってくるからです。


※「ジャンルにこだわらない、売れる絵ならなんでも描く」という方はこの限りではありません。その場合、成長分野がどんなジャンルか、競合状態はどうか、市場規模はどのくらいか、といった市場調査が必要になります。

 

 

今回は絵描きにとっての“ポジショニング”を考えました。
あなたが絵描きであることと、あなたの描いている絵のジャンルによって、あなたの市場におけるポジションはほぼ決まっています。それは顧客を絞り込んていることを意味しているのです。

自分のポジションをはっきりと意識してください。
そのためには「あなたの描いている絵はどんな絵で、それにお金を払ってくれるのはどんな人か」を考え抜くことです。
それが次回お話しする“ターゲッティング”につながっていきます。

 

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